5.5 味覚・嗅覚・触覚・前庭感覚

 

 化学感覚

味覚と嗅覚はどちらも、私たちが食べる食物や呼吸する空気中の分子に反応する感覚受容器を持っているため、化学感覚と呼ばれる。

 

 

味覚Taste (Gustation)

甘い、塩辛い、酸っぱい、苦い

うま味は、実際には大まかにおいしいと訳される日本語の単語であり、グルタミン酸ナトリウムと関連。与えられた食品の脂肪含有量に対する味でもある。

私たちが消費する食べ物や飲み物の分子は唾液salivaに溶け、舌や口や喉の味覚受容体taste receptorsと相互作用する。

 

 

味蕾Taste budsは、中央の毛穴に突き出た髪の毛のような延長部を持つ味覚受容体細胞のグループによって形成される。味蕾のライフサイクルは10日から2週間なので、舌をやけどして味蕾を破壊しても長期的な影響はない。

味覚分子はこの伸長部の受容体に結合し、感覚細胞内で化学変化を引き起こし、受容体の位置に応じて、神経インパルスがさまざまな神経を介して脳に伝達される。味覚情報は、延髄、視床、大脳辺縁系、および前頭葉と側頭葉の重なりの下に隠れている味覚野gustatory cortexに伝達される.

 

 

 

 

 

嗅覚 Smell (Olfaction)

 

 

嗅覚受容体細胞Olfactory receptor cellsは、鼻の上部の粘膜にあり、粘液に溶解した匂い分子が化学受容体と相互作用する。匂い分子が特定の受容体に結合すると、細胞内の化学変化により、嗅神経が始まる前頭葉の先端にある嗅球olfactory bulbに信号が送信される。そして嗅球から、情報は大脳辺縁系の領域と味覚野the gustatory cortexのすぐ近くにある一次嗅覚皮質primary olfactory cortexに送られる。

 

 

犬は血糖値の危険な低下や癌性腫瘍の匂いを嗅いで判別することができる。

 

多くの種は、別の個体から送信されたフェロモンとして知られる化学的メッセージに反応する。フェロモンコミュニケーションには、多くの場合、潜在的な配偶者の生殖状態に関する情報の提供が含まれ、メスのラットが交尾する準備ができているとき、彼女は近くのオスのラットから注意を引くフェロモン信号を分泌する。フェロモンの活性化は、実際には雄ラットの性行動を誘発する上で重要な要素である。

 

 

 

触覚Touch、温度覚Thermoception、痛覚 Nociception

 

 

触覚Touch

触覚の受容体には、マイスナー小体、パチニ小体、メルケル円板、ルフィニ小体がある。

 

マイスナー小体Meissner’s corpuscles　圧力と低周波振動に反応

 

パチニ小体 Pacinian corpuscles　　過渡圧力と高周波振動に反応

 

メルケル円盤Merkel’s disks　軽い圧力に反応

 

ルフィニ小体Ruffini corpuscles　伸びを検出

 

 

 

 

 

温度知覚thermoceptionと痛覚nociception受容体と自由神経終末から収集された感覚情報は、脊髄を伝わり、延髄、視床の領域に伝達され、最終的には頭頂葉の中心後回にある体性感覚野に伝達される。

 

 

 

痛覚 Nociception

 

炎症性の痛みinflammatory pain

組織損傷を示す痛み。

 

神経障害性の痛みneuropathic pain

末梢神経系または中枢神経系のニューロンへの損傷が原因で痛みが生じると脳に送られる痛みの信号は誇張される。

 

先天性無痛症congenital insensitivity to pain or congenital analgesia

非常にまれな遺伝性疾患で、先天性無痛症の人は体温と圧力の違いは検出できるが、痛みを感じることができない。幼児は繰り返し噛んだりして口や舌に重傷を負う。負傷と負傷した部位の二次感染のために平均余命がはるかに短くなる。

 

 

 

前庭感覚The Vestibular Sense、固有受容Proprioception, 運動感覚Kinesthesia

 

前庭感覚vestibular sense バランスと体の姿勢を維持する機能に不可欠

主要な感覚器官（卵形嚢utricle、球形嚢saccule、三半規管semicircular canals）は内耳における蝸牛の隣に位置している。前庭器官は液体で満たされ、聴覚系に見られるものと同様の有毛細胞を持っており、頭の動きと重力に反応する。これらの有毛細胞が刺激されると、前庭神経を介して脳に信号を送る。

 

前庭系の主要な感覚器官は、内耳の蝸牛の隣にあり,これらには、卵形嚢utricle、球形嚢saccule、及び三半規管semicircular canals（後部、上部、および水平）が含まれる。

 

 

固有受容proprioception（体の位置の知覚）と運動感覚kinesthesia（空間を通る体の動きの知覚）の両方が、前庭系によって提供される情報と相互作用する。

 

 

これらの感覚システムは、筋肉、関節、皮膚、腱のストレッチと緊張に反応する受容体からも情報を収集する。固有受容および運動感覚の情報は、脊柱を介して脳に伝わる。

 

小脳に加えていくつかの皮質領域は、固有受容および運動感覚系の感覚器官から情報を受け取り、情報を送信する。