4.5 薬物の使用と乱用

 

物質使用障害Substance Use Disorders

薬物使用障害は習慣性障害であり、当初の意図よりも多くの物質を使用し、重大な悪影響を経験しているにもかかわらず、その物質を使用し続ける状態。薬物使用の強迫的なパターンがあり、身体的および精神的依存の両方に関連している。

 

身体的依存Physical dependence

正常な身体機能の変化のこと。薬物の使用を中止すると、薬物からの離脱が可能である。

 

精神的依存psychological dependence 

肉体的ではなく感情的な薬の必要性があり、精神的苦痛を和らげるために薬を使用している状態。耐性Toleranceは生理学的依存と関連しており、以前は低用量で経験した効果を達成するために、人がますます多くの薬物を必要とするようになることがある。耐性があると、ユーザーは薬物の使用量を危険なレベルまで、さらには過剰摂取や死亡に至るまで増やす可能性がある。

 

薬物離脱Drug withdrawal

薬物使用を中止したときに経験するさまざまな負の症状が含まれる。鎮静薬からの離脱は、しばしば不快な覚醒と興奮を引き起こす。

 

 

 

 

 

 

向精神薬とその効果

薬物のクラス	例	体への影響	使用時の効果	心理的中毒
覚醒剤	コカイン、アンフェタミン（Adderallなどの一部のADHD薬を含む）、メタンフェタミン、MDMA（「エクスタシー」または「モリー」）	心拍数、血圧、体温の上昇	低用量での覚醒の増加、軽度の陶酔感、食欲の低下。高用量は興奮、妄想を増加させ、幻覚を引き起こす可能性がある。 いくつかは、物理的刺激に対する感受性を高める可能性がある。高用量のMDMAは、脳毒性と死を引き起こす可能性がある。	有
鎮静催眠薬（抑制剤）	アルコール、バルビツール酸塩（例、セコバルビタール、ペントバルビタール）、ベンゾジアゼピン（例、ザナックス）	心拍数、血圧の低下	低用量はリラクゼーションを増加させ、抑制を減少。高用量は睡眠を誘発し、運動障害、記憶喪失、呼吸機能の低下、および死を引き起こす可能性がある。	有
アヘン剤	アヘン、ヘロイン、フェンタニル、モルヒネ、オキシコドン、ビコデン、メタドン、およびその他の処方鎮痛剤	痛みの減少、瞳孔の拡張、腸の運動性の低下、呼吸機能の低下	痛みの緩和、陶酔感、眠気。高用量は呼吸抑制による死を引き起こす可能性ある。	有
幻覚剤	マリファナ、LSD、ペヨーテ、メスカリン、DMT、ケタミンやPCPなどの解離性麻酔薬	心拍数と血圧の上昇	ひずみ、摂取方法、個人差に基づく効果のばらつきが大きい軽度から強烈な知覚変化	有

向精神薬は神経伝達物質システムのアゴニストまたはアンタゴニストとして作用する。アゴニストは神経伝達物質システムの活動を促進し、アンタゴニストは神経伝達物質の活動を妨げる。

 

 

 

覚醒剤Stimulants

神経活動の全体的なレベルを高める傾向がある薬。これらの薬の多くは、ドーパミン神経伝達物質システムのアゴニストとして機能する。乱用度が高い。コカイン、アンフェタミン（メタンフェタミンを含む）、カチノン（すなわち、浴塩）、MDMA（エクスタシー）、ニコチン、およびカフェインが含まれます。

 

陶酔感euphoric high　激しい高揚感と喜びの感情。

 

 

 

コカインCocaine

多くのユーザーがコカインを鼻で吸いこむが、静脈注射と吸入（喫煙）も一般的である。コカインは神経シナプスでのドーパミンの再取り込みをブロックすることにより、ドーパミン神経伝達物質システムを壊していく。

 

 

アンフェタミンAmphetamines 

ドーパミンの放出を刺激することに加えて、ドーパミンの再取り込みをブロックするという点で、コカインと非常によく似ている。アンフェタミンも薬物乱用されるが、注意欠陥多動性障害（ADHD）と診断された子供にも一般的に処方されている。衝動調節に関連する前頭前野と大脳基底核内の神経伝達物質活性の増加させることによって多動性障害を伴う障害を治療する。

 

 

コカインとアンフェタミンは、シナプスからシナプス前細胞へのドーパミンの再取り込みをブロックしする。

 

 

 

メタンフェタミンmethamphetamine

メタンフェタミンは、すぐに入手できる成分から作ることができるアンフェタミンの一種である。多くの市販の風邪やインフルエンザの治療薬に見られる化合物であるプソイドエフェドリンを含む薬から簡単に作ることができる。

 

喫煙可能で、中毒性が高い。喫煙可能な形態は非常に迅速に脳に到達し、到着とほぼ同じ速さで消散する強烈な陶酔感を生み出し、ユーザーに薬の服用を継続するよう促す。。強力で安価な形態のメタンフェタミンの入手可能性は、麻薬よりも過剰摂取のリスクが低いことと相まって、今日の薬物使用者の間でクリスタルメスを人気のある選択肢にしています（NIDA、2019）。覚醒剤の使用は、歯の問題（しばしば「メスマウス」と呼ばれる）、過度の引っかき傷による皮膚の擦過傷、記憶喪失、睡眠障害、暴力的な行動、妄想症、幻覚など、多くの深刻な長期的な健康問題を引き起こす。メタンフェタミン中毒は、治療が非常に難しく強い禁断症状を伴う。

 

 

MDMA（メテリンジオキシ-メタンフェタミンmethelynedioxy-methamphetamine、「エクスタシー」または「モリー」）

知覚を変える効果を持つ穏やかな覚醒剤。ユーザーは、エネルギーの増加、喜びの感覚、および感情的な暖かさをもたらす。繰り返し使用すると、モノアミン神経伝達物質（ドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニン）の全体的な枯渇につながり、気分の不快感、認知障害を引き起こす。

 

 

カフェインcaffeine

多くの一般的な医薬品（減量薬など）、飲料、食品、さらには化粧品にも含まれている。カフェインはアデノシン(睡眠を促進する神経伝達物質)受容体を阻害し、眠気を減らし、覚醒を促進する。

一般的に比較的安全な薬と考えられているが、カフェインの血中濃度が高いと、不眠症、興奮、筋肉のけいれん、吐き気、不整脈、さらには死に至る可能性がある。

 

 

ニコチンNicotine

中毒性が高く、タバコ製品の使用は、心臓病、脳卒中、およびさまざまな癌のリスクを増加させる。ニコチンは、アセチルコリン受容体(運動ニューロンの神経伝達物質)と相互作用する。覚醒作用がある。

 

 

 

 

 

オピオイドOpioids

ヘロイン、モルヒネ、メタドン、およびコデインなど。鎮痛作用があり痛みを軽減する。

体内には内因性のオピオイド神経伝達物質が存在し、オピオイド受容体に結合する少量のオピオイド化合物を作り、痛みを軽減し、陶酔感を生み出す。

 

 

アヘンopiates

天然オピオイドであり、ポピー植物に含まれる天然の化合物であるアヘンの誘導体である。

 

 

ヘロインheroin

鼻から吸い込む、喫煙、または静脈内注射。強烈な陶酔感と快感を生み出し、ヘロインを静脈内注射すると増幅される。最初の「ラッシュ」に続いて、ユーザーは4〜6時間の「うなずき」を経験し、意識状態と半意識状態を交互に繰り返す。結核とHIVの両方の収縮のリスクを増加させる。

 

 

 

メタドンMethadone　ヘロインや同様の薬よりも陶酔感が少ない合成オピオイド。

 

メタドンクリニックMethadone clinics　アヘン禁断症状を緩和する

 

コデインCodeine　効力が比較的低いオピオイド。多くの場合、軽度の痛みのために処方され、他のいくつかの国では市販されている。

 

 

 

 

 

幻覚剤Hallucinogens

体の感覚の幻覚（例えば、あなたが巨人であるかのように感じる）や時間の経過の歪んだ知覚を引き起こす。

 

メスカリンとLSDはセロトニンアゴニスト

PCP（エンジェルダスト）とケタミン（動物麻酔薬）はNMDAグルタミン酸受容体のアンタゴニスト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルコールおよびその他の抑制剤

 

私たちが一般的にアルコールと呼ぶエタノールEthanolは、抑制剤として知られる向精神薬である。

 

抑制剤depressant　抑制中枢神経系の活動に傾向がある薬剤。

 

バルビツール酸塩barbiturates とベンゾジアゼピンbenzodiazepines.。これらの薬は、ガンマアミノ酪酸gamma-Aminobutyric acid（GABA）神経伝達物質システムのアゴニストとして機能する能力を共有する。

GABAは脳に鎮静効果があるため、GABAアゴニストにも鎮静効果がある。不安神経症と不眠症の両方を治療するために処方される。

 

 

ゲート塩化物（Cl –）チャンネルは、特定のニューロンの細胞膜に埋め込まれており、チャネルには、アルコール、バルビツール酸塩、およびベンゾジアゼピンが結合して効果を発揮する複数の受容体部位がある。これらの分子が結合すると、塩化物チャネルが開き、負に帯電した塩化物イオン（Cl –）がニューロンの細胞体に入ることができるようになる。電荷を負の方向に変えると、ニューロンは遠ざかる。したがって、GABAニューロンを活性化すると、脳に鎮静効果がある。

 

 

一般的に、アルコールは反応時間と視力の低下、覚醒レベルの低下、行動制御の低下をもたらす。過度のアルコール摂取により、意識が完全に失われたり、中毒の期間中に発生した出来事を思い出すのが困難になったりする可能性がある。

 

妊娠中の女性がアルコールを摂取すると、乳児は、胎児性アルコールスペクトラム障害fetal alcohol spectrum disorder（FASD）または胎児性アルコール症候群fetal alcohol syndrome（FAS）と総称される先天性欠損症および症状のクラスターを伴って生まれる可能性がある。

 

アルコールなどの中枢神経系抑制剤を繰り返し使用すると、人はその物質に物理的に依存するようになり、耐性と離脱症状の両方の兆候を示す。